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2009-11-10

『陰日向に咲く』劇団ひとり を読んで


陰日向に咲く (幻冬舎文庫)陰日向に咲く
(幻冬舎文庫)
劇団ひとり


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内容紹介
ホームレスを夢見る会社員。売れないアイドルを一途に応援する青年など、陽のあたらない場所を歩く人々の人生をユーモア溢れる筆致で描き、高い評価を獲得した感動の小説デヴュー作。
もくじ
道草
拝啓、僕のアイドル様
ピンボケな私
Over run
鳴き砂を歩く犬

映画「陰日向に咲く」は、映画館で見て、DVDで見て、その度に「美しい物語だよな」と胸に熱いものを感じる、とっても好きな作品ですが、
その原作小説である本書もまた、読み返す毎に「素敵なストーリーだな」と感じる。
劇団ひとり、こんなにも素敵な小説を生み出す彼の才能を素直にカッコいいと思う。

映画「陰日向に咲く」公式サイト
陰日向に咲く 通常版 [DVD]陰日向に咲く
出演:岡田准一, 宮崎あおい
監督:平川雄一朗

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映画の中で流れる、澤野弘之さんが手がけた音楽も、とても好きだ。


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劇団ひとり『陰日向に咲く』の映画が1月に公開
2009-11-08

『八番筋カウンシル』津村記久子 を読んで


八番筋カウンシル八番筋カウンシル
(朝日新聞出版)
津村記久子


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内容紹介
30歳を目前にして体調を崩し、会社を辞めたタケヤス。地元の八番筋商店街では近くに巨大モールができることで青年団(カウンシル)の会合が騒がしくなっていく。
地元を出た者と残った者、それぞれの姿を通じ人生の岐路を見つめ直す成長小説。

津村記久子さんの作品を読むのは『ミュージック・ブレス・ユー』に続いてこれが2冊目。
"八番筋カウンシル"というのは、商店街の青年会のこと。
地元を離れてサラリーマンをしていた主人公のタケヤスは、小説の新人賞を受賞するも体調を壊して会社を辞め、実家のある商店街に戻ってくる。
そこには中学の同級生のヨシズミ、ホカリ、カヤナたちがいて…。

津村さんの作品の特徴なのか分からないが、登場人物が結構たくさんなわりに、序盤ではあまり説明的な描写がなく、また人物名はみんなカタカナなので少しとっつきにくいかもしれないんだけれど、それがまた、"地元の商店街"が持つ微妙な雰囲気を描くのに効果的に働いているのかもしれない。

テーマになっているのは、子供のころから、大人になり家庭を持ち、年をとって老いるまでをずっと地元の限られたエリアの中だけで過ごす生き方を選択した人と、
高校、大学へと進み、いつしか地元を離れて都会で生きることを選んだ人との、その間に出来てしまったどうしようもない溝みたいなもの、かな。

そして、中学のときの同級生と、大人になってから再開したときの、
「夢や希望なんて結局かなわない、現実とはそんなもんだろう」的な何とも言えないガッカリ感というか。

また、世代間のギャップみたいなものも本作の重要なテーマになっている。
商店街の中では、30代の主人公たち若手のメンバーと、青年会の中心メンバーである中高年メンバーたちと、そして熟年、高齢者世代の人たちと、それぞれの世代にはそれぞれの歩んできた歴史の違いがあって、これからの商店街に対する意見があって、それらがせめぎ合って、物語は進んでいく。
家族というか、親と子の間の関係にも結構な力点が置かれている。

そういう難しいモヤモヤとした、人と人の間にある空気を、非常に上手く形にしている。
津村さんの作品、いろいろな物が一つのストーリーの中にぎゅっと詰め込まれていて、何とも味わい深い。


ちなみに本書の表紙は、写真家・佐藤信太郎さんの作品です。

SATO Shintaro PHOTO GALLAERY
非常階段東京―TOKYO TWILIGHT ZONE非常階段東京
TOKYO TWILIGHT ZONE
(青幻舎)
佐藤信太郎




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『ミュージック・ブレス・ユー!!』津村記久子 を読んで
2009-11-08

『孤独のグルメ(文庫版)』久住昌之,谷口ジロー を読んで


孤独のグルメ (扶桑社文庫)孤独のグルメ
(扶桑社文庫)
久住昌之, 谷口ジロー


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内容紹介
主人公・井之頭五郎は、食べる。
それも、よくある街角の定食屋やラーメン屋で、ひたすら食べる。
時間や社会にとらわれず、幸福に空腹を満たすとき、彼はつかの間自分勝手になり、「自由」になる。
孤独のグルメ――。それは、誰にも邪魔されず、気を使わずものを食べるという孤高の行為だ。そして、この行為こそが現代人に平等に与えられた、最高の「癒し」といえるのである。


中年のスーツのオッサンが、一人でもくもくと食事をしているだけのマンガなんだけど、これが何とも言えないイイ感じなんだ。
「モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず自由で なんというか救われてなきゃあダメなんだ
 独りで静かで豊かで……」

主人公の井之頭五郎は個人で輸入雑貨業をしていて、外回りの仕事が多いらしく、都内のさまざまな場所で常に腹を空かして、食事をする店を探してあたりをさまよっている。

で、妙な独りごとを言いながらひたすら食べているシーンが続く。
彼には独特の世界観があり、ルールがあり、それが絶妙な笑いのエッセンスになっている。
面白い。

隠れた名作『孤独のグルメ』の原作者と定食屋に行ってきた!:R25

Welcome To The 中年ワールド 「孤独のグルメ」:a Black Leaf はてなブックマーク

2009-11-08

『糞神』喜多ふあり を読んで


糞神糞神
(河出書房新社)
喜多ふあり


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内容紹介
高校の入学式。「世界中の迷えるベイビーたちを救うため!」と、担任教師が突然、学校を辞めた。
センセーはクソなのか? それとも神=ヒーローなのか!?
文藝賞受賞第一作。

『けちゃっぷ』で文藝賞を受賞した喜多ふありの新作。
この喜多ふありという作家、『けちゃっぷ』があまりにも衝撃的な作品だったので、そのあとがたいへんだよなと感じていたけれど、さすがです。
期待を裏切らない(プラスの意味で)力強さ、勢いがあふれる漢字で、今回もまた、とにかく終始はちゃめちゃな喜多ふありワールド全開な感じの衝撃作でした。

物語は高校の入学式直後のホームルームから始まる。
佐竹という担任の教師は突然意味不明のセリフを残して学校を辞めてしまう。
そこで"俺"と、クラスメートの工藤の二人は、佐竹の謎を探るための行動にでるんだけれど……、ていう冒頭から最後までまったく次の展開が読めない不思議なストーリー。

夢なのか現実なのか、本気なのか冗談なのか、リアルとバーチャルのつまらない境界をとっぱらってしまうと、何とも言えない笑いの世界がそこに見えてくる。
小説としての評価は真っ二つに分かれるタイプの作品だと思うけれど、私はこういうの嫌いじゃないかな。うん。

【関連記事】
『けちゃっぷ』喜多ふあり を読んで
2009-11-01

『薄闇シルエット』角田光代 を読んで


薄闇シルエット (角川文庫)薄闇シルエット
(角川文庫)
角田光代


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内容紹介
恋も、仕事も、友情も……「大人」になれず、惑いまくっているけど、いつかきっと、なにかつかめる著者渾身の傑作長編

「結婚してやる。ちゃんとしてやんなきゃな」と恋人に得意げに言われ、ハナは「なんかつまんねえ」と反発する。共同経営する下北沢の古着屋では、ポリシーを曲げて売り上げを増やそうとする親友と対立し、バイト同然の立場に。結婚、金儲けといった「ありきたりの幸せ」は信じにくいが、自分だけが何もかも見つからず、もう37歳。ハナは、そんな自分に苛立ち、戸惑うが……。
ひたむきに生きる女性の心情を鮮やかに描く傑作長編。


『薄闇シルエット』特設ページ:角川書店


主人公のハナちゃん、彼女のような人、私は好きだな。
ハナちゃんみたいな生き方をできる人を羨ましいと思うし、応援したいと思う。
友情も、恋人も、結婚も、仕事も、家族も、いろんな問題を抱え悩んで、
今のこの瞬間の自分を大切にしつつも、未来のことも考えていかなきゃならなくて、
大変ことはたくさんあるんだけど、でも現実に背中を向けずに懸命に前に進んでいく、
みたいな、何だか上手く表現できないけれど、とにかく幸せをつかもうと頑張っているその姿が、とってもイイんです。

家族や友達や恋人や仕事仲間が、自分には手に入らないものを持っていることに対して、羨ましがったり、ひがんだり、嫉妬したり、そういういかにも人間ぽい部分をきちんと描きながら、こんなにも魅力を感じさせる主人公、素敵な物語だ。
なんにもつかみとっていない、なんにも持っていない―それはつまり、これからなんでもつかめるということだ。間違えたら手放して、また何かつかんで、それをくりかえして、私はこれを持っていると言えるものが、たったひとつでも見つかればいいじゃないか。

よし、私だって何か見るかるまで頑張ってやるんだ、そういう気持ちにさせてくれる力が、この物語にはある。
2009-10-31

『猛スピードで母は』長嶋有 を読んで


猛スピードで母は (文春文庫)猛スピードで母は
(文春文庫)
長嶋有


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内容紹介
家族のカタチを爽やかに描いた芥川賞受賞作

「私、結婚するかもしれないから」「すごいね」。
小6の慎は結婚をほのめかす母を冷静に見つめ、恋人らしき男とも適度にうまくやっていく。現実に立ち向う母を子供の皮膚感覚で描いた第126回芥川賞受賞作と、
大胆でかっこいい父の愛人・洋子さんとの共同生活を爽やかに綴った第92回文學界新人賞受賞作「サイドカーに犬」を収録。

いや、面白かった。
まず、「サイドカーに犬」。
本書を読む前に、映画『サイドカーに犬』(竹内結子主演)は見たことはあったのだけど、あらためて原作を読んでみると、やっぱり素晴らしい。
映画では原作にはないエピソードの追加もあったけれど、やはりあの爽快な世界観はこの原作があったらかこそ生まれたのだと思った。
小学生の女の子と、その父親の愛人の女性とが何故か友達になる、そういう話なんだけど、二人の関係がすごくイイ感じなんだ。
物語は小学生の薫の視点から描かれている。
薫からみた洋子さんは、それまで出会ったことのないタイプの女性で、いろんなことがどれも新鮮で、自分のルールをしっかり持っている洋子さんはとにかくカッコよくって爽やかさにあふれている。
ちょっと戸惑いながらも、洋子さんのカッコよさに魅かれていく薫の姿を、子供ならではの感覚を大切に描いていて、上手いなと思う。

表題作の「猛スピードで母は」の方も、同じく子供から見たカッコいい大人の女性の姿を描いた物語。
こちらは、小学生の慎とその母親のお話なんだけど、この母親もやっぱりちょっと世間一般とは違う自分自身のルールをしっかりと持っている強い女性で、爽やかなカッコよさがある。

映画『サイドカーに犬』公式サイト
サイドカーに犬 [DVD]サイドカーに犬
監督:根岸吉太郎
主演:竹内結子


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2009-10-17

『終わりは始まり』中村航&フジモトマサル を読んで


終わりは始まり終わりは始まり
(集英社)
中村航, フジモトマサル


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内容紹介
可愛くて不思議で面白い、ぐるぐるワールド
読者が投稿した回文をもとに、フジモトマサルのイラストレーションと、中村航のショートストーリーをコラボレーションさせた掌編集。言葉遊びの面白さを堪能できる、めくるめく回文の世界。

回文を題材にしたショートストーリー集。
一つの物語は3〜4ページほどの短いものばかりなんだけれど、そのどれもが中村航のニオイが感じられる素敵なもので、読んでいる心がろ過されているような気になる。

全部で27編の話がある中で、私が一番気に行ったのは「秀男さんの代わり」かな。
ひたむきに一つのことのために打ち込み、遂に素晴らしい成果をあげた男と、彼の努力を支え続けた男、二人の姿が何だかとってもカッコ良かった。
たった数ページの文章でこんなにも素敵な世界を作り上げ人を感動させることができるなんて、やっぱり中村航ってスゴイんだ!そう思った。

言葉の美しさを感じてとても満たされた気分になれる、そんな一冊だ。


中村航公式サイト

フジモトマサルの仕事
2009-10-16

『ジャージの二人』長嶋有 を読んで


ジャージの二人 (集英社文庫)ジャージの二人
(集英社文庫)
長嶋有


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内容紹介
『猛スピードで母は』で芥川賞を受賞した著者が、「低スピードな父」との関係を描いた話題作。
失業中で小説家志望の息子。妻はよその男と恋愛中。三度目の結婚生活も危うそうな、写真家の父親。
そんな二人が軽井沢の山荘で過ごす、とりとめのない夏の終わりの思い…。

『ジャージの二人』映画の方は観たことがあって、たまたまその原作本を見かけたので読んでみました。
原作の雰囲気を見事に映画作品にした中村義洋監督の手腕を感じ、やっぱりすごいなと思った。
この親子って大事なことは何も言わないんですよね。でもその関係はねじれてはいない。世の中には何でも話し合う気味悪いぐらい健全な家族もいると思いますけど、人とのつき合い方や家族とのつき合い方の距離感が僕にとってはかなりリアルなところに共感できたんです。
中村義洋監督

森の中の古びた家で、中年の男二人が過ごす。平凡な生活風景の中に見る何とも言えない気だるい感じがとっても面白い。
妻が浮気しているとか、やりたい仕事ができないとか、結構深い悩みを抱えていながらも、決して深刻そうな姿は見せない、そんな父と息子の間の距離感がほんとに絶妙で、おもわずクスッと笑ってしまう。

派手な事件やクライマックス的な場面は全くなくラストまでずうっとフラットな感じの静かな物語。
たまにはこういうのもいいな、と思う。

映画『ジャージの二人』公式サイト

ジャージの二人 [DVD]ジャージの二人
出演:堺雅人, 鮎川誠
監督:中村義洋


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2009-10-11

『東京島』桐野夏生 を読んで


東京島東京島
(新潮社)
桐野夏生


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内容紹介
あたしは必ず、脱出してみせる――。ノンストップ最新長篇!

32人が流れ着いた太平洋の涯の島に、女は清子ひとりだけ。いつまで待っても、無人島に助けの船は来ず、いつしか皆は島をトウキョウ島と呼ぶようになる。果たして、ここは地獄か、楽園か? いつか脱出できるのか――。欲を剥き出しに生に縋りつく人間たちの極限状態を容赦なく描き、読む者の手を止めさせない傑作長篇誕生!

『東京島』特設サイト:新潮社

『東京島』桐野夏生:[書評]asahi.com
衝撃作『東京島』の桐野夏生さんに聞く:MSN産経ニュース

無人島に漂流した人間たちのサバイバル物語。

41歳の清子は夫と2人でクルーザーで世界一周の旅の途中で不運にも無人島に漂着してしまう。
後に、日本人の若者たち、そして中国人の集団がその島に漂着。
彼らはその無人島に、トウキョウと名前をつけ、いつか日本に帰る日を夢見て集団生活を始める。

桐野夏生の独特の文体で、必死になった人間の腹黒さが生々しく描かれている。
生き残るために全力を尽くそうとする人間の強さを感じて、ただただそのすごさに圧倒されてしまう。

後半では、次々に予想外の事件が巻き起こって、もう最後まで一気に読んでしまう。
そして、見事な結末。さすがだなと思う。

2009-10-04

『この本が、世界に存在することに』角田光代 を読んで


この本が、世界に存在することに (ダ・ヴィンチ・ブックス)この本が、世界に存在することに
(メディアファクトリー)
角田光代



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内容紹介
本への愛情をこめて角田光代が描く新境地!

第132回直木賞受賞作家 最新短編集。
本への愛情をこめて角田光代が描く新境地!泣きたくなるほどいとおしい、ふつうの人々の“本をめぐる物語”が、あなたをやさしく包みます。
心にしみいる九つの短編を収録。

たびする本 / だれか / 手紙 / 彼と私の本棚 / 不幸の種 / 引き出しの奥 / ミツザワ書店 / さがしもの / 初バレンタイン / あとがきエッセイ 交際履歴

読んで良かった。
『この本が、世界に存在することに』このタイトルを見た瞬間に「なんて素敵な言葉なんだ。これは絶対に読むべきだ」って感じた。
その予感は間違ってなかった。
とっても素敵な物語ばかりの、とっても素敵な短編集だった。
私自身、この本に出会うことができて、本当に良かった、そう思えた。

本にまつわる短い物語、その一つひとつから、伝わってくるメッセージが、心にしみ込んでくる感じがたまらなく心地よかった。
この本を、中原千絵子は中学三年生のとき読んだ。読み終えて、神さまありがとうとまず思った。神さま、この本が世界に存在することに感謝します、と。この本が存在するのとしないのとでは世界はだいぶ違うだろうと中原千絵子は考えた。

本によって、世界の見え方が変わる瞬間がある。
本によって、人生が動く瞬間がある。

これからも、素敵な本に出会いたい、そう心から思える一冊。