内容紹介
30歳を目前にして体調を崩し、会社を辞めたタケヤス。地元の八番筋商店街では近くに巨大モールができることで青年団(カウンシル)の会合が騒がしくなっていく。
地元を出た者と残った者、それぞれの姿を通じ人生の岐路を見つめ直す成長小説。
津村記久子さんの作品を読むのは『ミュージック・ブレス・ユー』に続いてこれが2冊目。
"八番筋カウンシル"というのは、商店街の青年会のこと。
地元を離れてサラリーマンをしていた主人公のタケヤスは、小説の新人賞を受賞するも体調を壊して会社を辞め、実家のある商店街に戻ってくる。
そこには中学の同級生のヨシズミ、ホカリ、カヤナたちがいて…。
津村さんの作品の特徴なのか分からないが、登場人物が結構たくさんなわりに、序盤ではあまり説明的な描写がなく、また人物名はみんなカタカナなので少しとっつきにくいかもしれないんだけれど、それがまた、"地元の商店街"が持つ微妙な雰囲気を描くのに効果的に働いているのかもしれない。
テーマになっているのは、子供のころから、大人になり家庭を持ち、年をとって老いるまでをずっと地元の限られたエリアの中だけで過ごす生き方を選択した人と、
高校、大学へと進み、いつしか地元を離れて都会で生きることを選んだ人との、その間に出来てしまったどうしようもない溝みたいなもの、かな。
そして、中学のときの同級生と、大人になってから再開したときの、
「夢や希望なんて結局かなわない、現実とはそんなもんだろう」的な何とも言えないガッカリ感というか。
また、世代間のギャップみたいなものも本作の重要なテーマになっている。
商店街の中では、30代の主人公たち若手のメンバーと、青年会の中心メンバーである中高年メンバーたちと、そして熟年、高齢者世代の人たちと、それぞれの世代にはそれぞれの歩んできた歴史の違いがあって、これからの商店街に対する意見があって、それらがせめぎ合って、物語は進んでいく。
家族というか、親と子の間の関係にも結構な力点が置かれている。
そういう難しいモヤモヤとした、人と人の間にある空気を、非常に上手く形にしている。
津村さんの作品、いろいろな物が一つのストーリーの中にぎゅっと詰め込まれていて、何とも味わい深い。
ちなみに本書の表紙は、写真家・佐藤信太郎さんの作品です。
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