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2009-11-29

『きょうのできごと』柴崎友香 を読んで


きょうのできごと (河出文庫)きょうのできごと
(河出文庫)
柴崎友香


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内容紹介
大阪から京都へ引っ越した友人の新居祝いに集まった、20代前半の男女。
けいと、真紀、中沢、かわち、正道……5人のわたし/ぼくを語り手に、真夜中を越えて続く「きょう」のちいさな「できごと」を切り取った全5編の連作短篇集。
文庫版の書下ろし短篇「きょうのできごとのつづきのできごと」も収録。
もくじ
レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー
ハニー・フラッシュ
オオワニカワアカガメ
十年後の動物園
途中で
きょうのできごとのつづきのできごと

柴崎友香さんの単行本デビュー作となった『きょうのできごと』。
本作品は、行定勲監督によって同タイトルで映画化もされている。

先日、『フルタイムライフ』を読んで柴崎友香という作家が俄然気になっていた私だが、
この『きょうのできごと』を読んで、ますますその魅力にハマってしまった。
あぁ、こういう作風もあるのか、いやむしろこっちが原点か、みたいな感じの発見もあった気がして、柴崎友香やるな、と思った。

短篇連作ということで、物語それぞれの語り手になる人物を変えながら、一つひとつのできごとを絶妙なバランスとタイミングでリンクさせ、視点移動の効果を最大限に引き出すその手法は、本当にみごとだと思う。

深夜零時をまたいでの一日のできごとを描いた物語なんだけれど、人物一人ひとりの過去現在を、時間と空間とに大きな広がりを持たせて伝えてくれると同時に、
一瞬一瞬のその場の雰囲気をも大切に表現しようとする、読んでいてすごく面白いと感じる場面の多い作品だった。
ほんまに、始まりすらなくて終わりすらない、そんなとてもささやかな
一シーンを切り取っただけなんだけど、
その一瞬で彼らたちがほんの少しだけ前に歩いたような、
そんな風にふと思える瞬間が幾度もあり、
私はとても前向きな気分になりました。
本を読む女。改訂版

↑は「本を読む女。改訂版」のざれこ さんの感想。
私的にぴったりな感じがしたので紹介させてもらいます。

何でもない、"日常"のなかにある「いいな、これ」と思える瞬間をとらえて、その連続でこんなに素敵な世界観を持つ物語として形にする、柴崎友香という作家、私はすごく好きです。

なにかドラマチックなものがあるものが小説、という意識もなかったですし、自分の好きな映画や写真は、場面や風景だけでも好きだから、それは小説でやっても全然おかしくないと思っていたんですね。とにかく私としては、なんにもないことを書きたい、と。なんにもなくても生きていけるということを書きたいと思ったんです。
柴崎友香ロングインタヴュー「世界をありのままに描きたい」
『文藝 2008年冬号』より





きょうのできごと スペシャル・エディション [DVD]きょうのできごと
監督:行定勲
出演:妻夫木聡、田中麗奈




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『フルタイムライフ』柴崎友香 を読んで
2009-11-23

『センネン画報』今日マチ子 を読んで


センネン画報センネン画報
(太田出版)
今日マチ子


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内容紹
叙情マンガ家・今日マチ子、待望の処女作!
柔らかなタッチ、淡い色づかいに、ちょっぴりスパイスの効いたストーリーが魅力の「叙情マンガ家」今日マチ子。彼女は2004年7月より、1ページのショートマンガ『センネン画報』を、ほぼ、毎日、更新してきました。
文化庁メディア芸術祭では、異例の2年連続受賞でWEBを中心に話題となり、ついに書籍化が決定いたしました。本書では1200点を超える作品の中から、春夏秋冬にあわせて作品を厳選。さらに、今日先生初の長編作品『海から36km』(32ページ)を収録します。
ずっと手元に置いておきたい、ステキな1冊に仕上がりました。

『フルタイムライフ』(河出文庫 柴崎友香)の表紙絵が今日マチ子さんが描いたもので、それがとっても気に入って、もっと今日マチ子さんの絵が見たくなって、この『センネン画報』を手に取りました。

柔らかくて瑞々しいタッチと、シュールな可愛らしさのある絵がとっても好きです。

今日マチ子のセンネン画報

『みかこさん』今日マチ子

三井住友銀行「ミドリさん」今日マチ子
2009-11-23

『フルタイムライフ』柴崎友香 を読んで


フルタイムライフ (河出文庫)フルタイムライフ
(河出文庫)
柴崎友香


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内容紹介
美術系の大学を卒業し、心斎橋の包装機器会社に就職した喜多川春子(わたし)。
事務の仕事に慣れ、働くことの楽しさに気付いていく彼女の変化とともに、会社の上司や同僚のOL、友達の紹介で知り合った男の子らとの人間関係も少しずつ変化していく。
会社員生活一年目の5月から翌年2月までの10カ月を、全10章構成で綴る。

柴崎友香さんの作品を読むのはコレが初めてだったんだれけど、とっても良かったです。
初めて読む作家の作品が自分の中での"あたり"だったときって、何だかとっても嬉しい気持ちになれる。
見つけたぞ!って。

主人公の喜多川春子は、美術系の大学を卒業して、食品包装機械のメーカーの事務職として就職したごく普通の女の子。
本当はデザイン関係の仕事をしたかった、って気持ちもほのかに漂わせながら、事務・総務の仕事にも楽しみ・面白さを見つけだせている。
彼女の仕事は、コピーやデータ入力、社内報製作、などのいわゆる事務一般で、派手に目立つものではない。

よくある小説のパターンだと、平凡な主人公が何か"やりたいこと"を見つけだして、カッコ良く変わっていく姿を描くものが多いような気がするけれど、
本作『フルタイムライフ』はそういう話とは全然違う。
ごくごく普通で平凡であることを否定しない、カッコ悪く思わせない。

夢や目標が明確にあってそれに向かって突き進む、そういう人たちだけが素敵なんじゃない。
いまの自分を好きで、毎日の日常の中で普通の当たり前のことを続けていく、そういう人の姿にも素敵な部分が実はたくさんある、それをしっかりと伝えてくれた。
必要なのは、なにかするべきことがあるときに、それをすることができる自分になることだと思う。(中略)
きっと、それでいいと思う。

『文藝 2008冬号』で柴崎友香さんの特集が載ってたのを思い出して、読み返してみると、こんなことが書いてある。
なんか、負けたくないという気持ちはありますよね。悲観的な気分とか、行き詰っている状況とか世の中の大きい流れとか、いろんなことに。『フルタイムライフ』の女の子は、「なにか」に負けたくないから好きな仕事じゃなくても働く。
柴崎友香ロングインタヴュー「世界をありのままに描きたい」 『文藝 2008冬号』より


とにかく、良かったです。
読み終えた後の清々しい感じや、主人公への共感できる度合いの深い感じ、すごくイイ。平凡な事務の女の子を主人公に、こんなにも素晴らしい物語を作ってしまう、柴崎友香という人が他にはどんな作品を書いているのか、とっても気になります。
ぜひ、別の作品も読んでみたい。


そうそう、本書を手に取ったきっかけは、表紙の絵がとっても気に行ったからなんですが、これ『センネン画報』の今日マチ子さんの絵です。
作品の世界観にぴったりハマっています。

今日マチ子のセンネン画報

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2009-11-15

『人生最高の10のできごと』アディーナ・ハルパーン を読んで


人生最高の10のできごと (イソラ文庫)人生最高の10のできごと
(早川イソラ文庫)
アディーナ・ハルパーン(著), 田辺千幸(訳)


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内容紹介
天国に住み続けるためにわたしは人生をふりかえる。

わたしは死んだ。29歳のある夜、突然に。気がつけば天国にいて、そこはなんでも思い通りになるすばらしい場所。ずっと憧れていた家に住み、クローゼットには憧れの服や靴。食べ物は想像するだけで現われ、お腹いっぱい食べても太らない。まるで夢みたい!
ただし、ここに住み続けるために合格しなければならないテストがあるという。
こうしてアレックスは、人生でもっとも良かったできごとを10選ぶことになる……
ひとりの女の子が大人になるまでをコミカルに、ときどきシリアスに振り返りながら、生きることの喜びを描きだす感動作。

本が好き!より献本いただきました。
とっても良かった!

著者のアディーナ・ハルパーンはアメリカでファッション誌にコラムを書いているフリーライターで、小説家としては本書がデビュー作になる。
そんな彼女が書いた本書『人生最高の10のできごと』は、
アメリカ人のごく普通の女の子が、家族、友だち、恋、仕事に悩みながら成長していく波乱万丈の半生を、笑いあり涙ありのとってもドラマチックに描いた素敵な物語。

物語は、主人公のアレックスという女性が、29歳にして交通事故で死んでしまい、天国にやってくるところから始まる。
最初は天国があまりにも快適な場所なので、それに非常に満足していたアレックスだが、ある日、守護天使のデボラが現われて、次のようなことを告げられる。

・天国には第7〜第1までの階層がある。
・最も素晴らしい第7天国に住み続けるにはテストに合格する必要がある。
・テストの内容は"人生最高の10のできごと"という題で作文を書くこと

さあ、大変だ。ということでアレックスは生まれてから29歳で死ぬまでの間の人生の中で起こったできごとを思い返していき、良かったことベスト10を挙げていくことになる。

いま私自身は26歳なんだけれど、この小説を読みながら、
自分だったら、"人生最高の10のできごと"としてどんなことを挙げるだろう?みたいなことを一緒に考えさせられた。
で、結局頭に浮かんでくるのは、物語の主人公アレックスが作文に書いたことと大体同じようなこと(つまりはどんな人と出会って、それによって自分がどれだけ成長することができたか、そして他の誰かをハッピーにする手助けをできたか)だったりして、
なんだ自分の人生って結構幸せいっぱいなのかもしれないな、なんて思ったりした。

具体的に、アレックスがどんな出来事を最高の10個にリストアップしたのかは、この本を読んでもらうとして、とにかく人が今まで生きてきた時間をどれだけ幸せだと感じられるかは、物質的な満足なんかじゃなくって、心がどれだけ温かく感じられるかなんだ、そういうことを様々なやり方で伝えてくれる、とてもメッセージ性の強いお話でした。

天国みたいな世界が本当にあるんだとしたら、それが本書のような素敵な世界だったとしたら、変な言い方かもしれないが、そこに行ける日がちょっとだけ楽しみな気もする。
そして、その時、アレックスが書いたような作文を自分が書くことになったら、と想像して、そのために幸せいっぱいの人生を送れるように頑張らなきゃ、そう思わせてくれる小説でした。
読んで良かった、そう思います。


この『人生最高の10のできごと』は、エイミー・アダムス主演で映画化が計画されているそうで、そちらの方もとても楽しみです。


人生最高の10のできごと
  • アディーナ・ハルパーン/田辺千幸
  • 早川書房
  • 798円
Amazonで購入
書評/SF&ファンタジー

2009-11-10

『陰日向に咲く』劇団ひとり を読んで


陰日向に咲く (幻冬舎文庫)陰日向に咲く
(幻冬舎文庫)
劇団ひとり


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内容紹介
ホームレスを夢見る会社員。売れないアイドルを一途に応援する青年など、陽のあたらない場所を歩く人々の人生をユーモア溢れる筆致で描き、高い評価を獲得した感動の小説デヴュー作。
もくじ
道草
拝啓、僕のアイドル様
ピンボケな私
Over run
鳴き砂を歩く犬

映画「陰日向に咲く」は、映画館で見て、DVDで見て、その度に「美しい物語だよな」と胸に熱いものを感じる、とっても好きな作品ですが、
その原作小説である本書もまた、読み返す毎に「素敵なストーリーだな」と感じる。
劇団ひとり、こんなにも素敵な小説を生み出す彼の才能を素直にカッコいいと思う。

映画「陰日向に咲く」公式サイト
陰日向に咲く 通常版 [DVD]陰日向に咲く
出演:岡田准一, 宮崎あおい
監督:平川雄一朗

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映画の中で流れる、澤野弘之さんが手がけた音楽も、とても好きだ。


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劇団ひとり『陰日向に咲く』の映画が1月に公開
2009-11-08

『八番筋カウンシル』津村記久子 を読んで


八番筋カウンシル八番筋カウンシル
(朝日新聞出版)
津村記久子


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内容紹介
30歳を目前にして体調を崩し、会社を辞めたタケヤス。地元の八番筋商店街では近くに巨大モールができることで青年団(カウンシル)の会合が騒がしくなっていく。
地元を出た者と残った者、それぞれの姿を通じ人生の岐路を見つめ直す成長小説。

津村記久子さんの作品を読むのは『ミュージック・ブレス・ユー』に続いてこれが2冊目。
"八番筋カウンシル"というのは、商店街の青年会のこと。
地元を離れてサラリーマンをしていた主人公のタケヤスは、小説の新人賞を受賞するも体調を壊して会社を辞め、実家のある商店街に戻ってくる。
そこには中学の同級生のヨシズミ、ホカリ、カヤナたちがいて…。

津村さんの作品の特徴なのか分からないが、登場人物が結構たくさんなわりに、序盤ではあまり説明的な描写がなく、また人物名はみんなカタカナなので少しとっつきにくいかもしれないんだけれど、それがまた、"地元の商店街"が持つ微妙な雰囲気を描くのに効果的に働いているのかもしれない。

テーマになっているのは、子供のころから、大人になり家庭を持ち、年をとって老いるまでをずっと地元の限られたエリアの中だけで過ごす生き方を選択した人と、
高校、大学へと進み、いつしか地元を離れて都会で生きることを選んだ人との、その間に出来てしまったどうしようもない溝みたいなもの、かな。

そして、中学のときの同級生と、大人になってから再開したときの、
「夢や希望なんて結局かなわない、現実とはそんなもんだろう」的な何とも言えないガッカリ感というか。

また、世代間のギャップみたいなものも本作の重要なテーマになっている。
商店街の中では、30代の主人公たち若手のメンバーと、青年会の中心メンバーである中高年メンバーたちと、そして熟年、高齢者世代の人たちと、それぞれの世代にはそれぞれの歩んできた歴史の違いがあって、これからの商店街に対する意見があって、それらがせめぎ合って、物語は進んでいく。
家族というか、親と子の間の関係にも結構な力点が置かれている。

そういう難しいモヤモヤとした、人と人の間にある空気を、非常に上手く形にしている。
津村さんの作品、いろいろな物が一つのストーリーの中にぎゅっと詰め込まれていて、何とも味わい深い。


ちなみに本書の表紙は、写真家・佐藤信太郎さんの作品です。

SATO Shintaro PHOTO GALLAERY
非常階段東京―TOKYO TWILIGHT ZONE非常階段東京
TOKYO TWILIGHT ZONE
(青幻舎)
佐藤信太郎




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『ミュージック・ブレス・ユー!!』津村記久子 を読んで
2009-11-08

『孤独のグルメ(文庫版)』久住昌之,谷口ジロー を読んで


孤独のグルメ (扶桑社文庫)孤独のグルメ
(扶桑社文庫)
久住昌之, 谷口ジロー


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内容紹介
主人公・井之頭五郎は、食べる。
それも、よくある街角の定食屋やラーメン屋で、ひたすら食べる。
時間や社会にとらわれず、幸福に空腹を満たすとき、彼はつかの間自分勝手になり、「自由」になる。
孤独のグルメ――。それは、誰にも邪魔されず、気を使わずものを食べるという孤高の行為だ。そして、この行為こそが現代人に平等に与えられた、最高の「癒し」といえるのである。


中年のスーツのオッサンが、一人でもくもくと食事をしているだけのマンガなんだけど、これが何とも言えないイイ感じなんだ。
「モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず自由で なんというか救われてなきゃあダメなんだ
 独りで静かで豊かで……」

主人公の井之頭五郎は個人で輸入雑貨業をしていて、外回りの仕事が多いらしく、都内のさまざまな場所で常に腹を空かして、食事をする店を探してあたりをさまよっている。

で、妙な独りごとを言いながらひたすら食べているシーンが続く。
彼には独特の世界観があり、ルールがあり、それが絶妙な笑いのエッセンスになっている。
面白い。

隠れた名作『孤独のグルメ』の原作者と定食屋に行ってきた!:R25

Welcome To The 中年ワールド 「孤独のグルメ」:a Black Leaf はてなブックマーク

2009-11-08

『糞神』喜多ふあり を読んで


糞神糞神
(河出書房新社)
喜多ふあり


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内容紹介
高校の入学式。「世界中の迷えるベイビーたちを救うため!」と、担任教師が突然、学校を辞めた。
センセーはクソなのか? それとも神=ヒーローなのか!?
文藝賞受賞第一作。

『けちゃっぷ』で文藝賞を受賞した喜多ふありの新作。
この喜多ふありという作家、『けちゃっぷ』があまりにも衝撃的な作品だったので、そのあとがたいへんだよなと感じていたけれど、さすがです。
期待を裏切らない(プラスの意味で)力強さ、勢いがあふれる漢字で、今回もまた、とにかく終始はちゃめちゃな喜多ふありワールド全開な感じの衝撃作でした。

物語は高校の入学式直後のホームルームから始まる。
佐竹という担任の教師は突然意味不明のセリフを残して学校を辞めてしまう。
そこで"俺"と、クラスメートの工藤の二人は、佐竹の謎を探るための行動にでるんだけれど……、ていう冒頭から最後までまったく次の展開が読めない不思議なストーリー。

夢なのか現実なのか、本気なのか冗談なのか、リアルとバーチャルのつまらない境界をとっぱらってしまうと、何とも言えない笑いの世界がそこに見えてくる。
小説としての評価は真っ二つに分かれるタイプの作品だと思うけれど、私はこういうの嫌いじゃないかな。うん。

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2009-11-01

『薄闇シルエット』角田光代 を読んで


薄闇シルエット (角川文庫)薄闇シルエット
(角川文庫)
角田光代


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内容紹介
恋も、仕事も、友情も……「大人」になれず、惑いまくっているけど、いつかきっと、なにかつかめる著者渾身の傑作長編

「結婚してやる。ちゃんとしてやんなきゃな」と恋人に得意げに言われ、ハナは「なんかつまんねえ」と反発する。共同経営する下北沢の古着屋では、ポリシーを曲げて売り上げを増やそうとする親友と対立し、バイト同然の立場に。結婚、金儲けといった「ありきたりの幸せ」は信じにくいが、自分だけが何もかも見つからず、もう37歳。ハナは、そんな自分に苛立ち、戸惑うが……。
ひたむきに生きる女性の心情を鮮やかに描く傑作長編。


『薄闇シルエット』特設ページ:角川書店


主人公のハナちゃん、彼女のような人、私は好きだな。
ハナちゃんみたいな生き方をできる人を羨ましいと思うし、応援したいと思う。
友情も、恋人も、結婚も、仕事も、家族も、いろんな問題を抱え悩んで、
今のこの瞬間の自分を大切にしつつも、未来のことも考えていかなきゃならなくて、
大変ことはたくさんあるんだけど、でも現実に背中を向けずに懸命に前に進んでいく、
みたいな、何だか上手く表現できないけれど、とにかく幸せをつかもうと頑張っているその姿が、とってもイイんです。

家族や友達や恋人や仕事仲間が、自分には手に入らないものを持っていることに対して、羨ましがったり、ひがんだり、嫉妬したり、そういういかにも人間ぽい部分をきちんと描きながら、こんなにも魅力を感じさせる主人公、素敵な物語だ。
なんにもつかみとっていない、なんにも持っていない―それはつまり、これからなんでもつかめるということだ。間違えたら手放して、また何かつかんで、それをくりかえして、私はこれを持っていると言えるものが、たったひとつでも見つかればいいじゃないか。

よし、私だって何か見るかるまで頑張ってやるんだ、そういう気持ちにさせてくれる力が、この物語にはある。
2009-10-31

『猛スピードで母は』長嶋有 を読んで


猛スピードで母は (文春文庫)猛スピードで母は
(文春文庫)
長嶋有


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内容紹介
家族のカタチを爽やかに描いた芥川賞受賞作

「私、結婚するかもしれないから」「すごいね」。
小6の慎は結婚をほのめかす母を冷静に見つめ、恋人らしき男とも適度にうまくやっていく。現実に立ち向う母を子供の皮膚感覚で描いた第126回芥川賞受賞作と、
大胆でかっこいい父の愛人・洋子さんとの共同生活を爽やかに綴った第92回文學界新人賞受賞作「サイドカーに犬」を収録。

いや、面白かった。
まず、「サイドカーに犬」。
本書を読む前に、映画『サイドカーに犬』(竹内結子主演)は見たことはあったのだけど、あらためて原作を読んでみると、やっぱり素晴らしい。
映画では原作にはないエピソードの追加もあったけれど、やはりあの爽快な世界観はこの原作があったらかこそ生まれたのだと思った。
小学生の女の子と、その父親の愛人の女性とが何故か友達になる、そういう話なんだけど、二人の関係がすごくイイ感じなんだ。
物語は小学生の薫の視点から描かれている。
薫からみた洋子さんは、それまで出会ったことのないタイプの女性で、いろんなことがどれも新鮮で、自分のルールをしっかり持っている洋子さんはとにかくカッコよくって爽やかさにあふれている。
ちょっと戸惑いながらも、洋子さんのカッコよさに魅かれていく薫の姿を、子供ならではの感覚を大切に描いていて、上手いなと思う。

表題作の「猛スピードで母は」の方も、同じく子供から見たカッコいい大人の女性の姿を描いた物語。
こちらは、小学生の慎とその母親のお話なんだけど、この母親もやっぱりちょっと世間一般とは違う自分自身のルールをしっかりと持っている強い女性で、爽やかなカッコよさがある。

映画『サイドカーに犬』公式サイト
サイドカーに犬 [DVD]サイドカーに犬
監督:根岸吉太郎
主演:竹内結子


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